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酸化ストレスと健康(その9)…携帯電話の安全な使い方① 会員 新札幌恵愛会病院 医師 宮口 勝行Dr.

酸化ストレスと健康(その9)…携帯電話の安全な使い方① 会員 新札幌恵愛会病院 医師 宮口 勝行Dr.

酸化ストレスと健康(その9)…携帯電話の安全な使い方①
会員 新札幌恵愛会病院 医師 宮口 勝行Dr.

活性酸素発生の原因の一つに電磁波があります。電磁波の発生源としては、送電線、家電製品が挙げられますが、まず注意したいのが携帯電話です。
ラジオやテレビなどの電波を利用したこれまでの電気製品は、いずれも電波を受信するシステムです。携帯電話は、電波(電磁波)の受信に加えて発信もするので機器周辺の電磁波が強くなります。電磁波の発生源から1波長以内を近傍界といい、とりわけ強い電磁波が発生していますが、一般の携帯電話の場合は20cm。頭部がすっぽりとこの近傍界に包まれてしまいます。
携帯電話と健康との関連で最も注目されているのが、 脳内の血液脳関門に及ぼす影響です。血液脳関門は有害物質の脳内の進入を妨げる働きをもち、脳を特別に保護する役割を果たしています。動物実験で、その機能が携帯電話の電磁波によって攪乱されることが確かめられました。97年にルンド大学(スウェーデン)で1002匹のラットを用いた実験です。携帯電話に近い周波数の電磁波を浴びせ、脳組織へ影響を調べました。すると、携帯電話の基準値のなんと1万分の1の強さで、血液脳関門の機能低下が表れました。そして、浴びせる電磁波が強くなるにつれて破壊される神経細胞の数が増えました。
こうした脳の神経細胞のダメージは、即座に人体に影響するわけではありません。しかし、長期的には痴呆の症状が早まる可能性があります。この論文中で次のように指摘されています。「成長途上の若い人たちが毎日携帯電話を使い続けることで、数十年後の中年にさしかかったときに思わぬ影響が表れてくる可能性は否定できない」
ほかにも、携帯電話の電磁波にとって、ヒトの脳波が影響を受けたとか、脳腫瘍の発生率が増えたなどという報告もあります。また、子どもの頭はおとなに比べ、特に電磁波の影響を受けやすいことも分かっており、イギリス保健省やドイツ小児科医協会は子どもの携帯電話の使用自粛を勧めています。携帯電話が明白に有害だという確証はありませんが、使用にあたっては、できるだけ電磁波の影響を減らす工夫が望まれます。 (つづく) 

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