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朱鞠内からの手紙 第4回 (会員 幌加内町 宮原光恵)

朱鞠内からの手紙 第4回 (会員 幌加内町 宮原光恵)

やがて、私の中に、ちゃんとしたものをお腹いっぱい食べられる生活がしたい、という欲求が沸き立ちました。夫が福岡正信さんの本を買ってきたのは、そんな時だったのです。

大胆、無謀な新規就農?!

当時住んでいた埼玉県日高市から移住16年、新規就農から14年目の今年になって、当時の自分達を思い出すと、なんとも大胆で無謀な新規就農だったなぁとつくづく思います。何しろ、当時の私たちには貯金はなく、農業ももちろんやったことはなく、ただ自然を相手に生きてゆく生活の手段として選択した職業に過ぎなかったからです。
埼玉県で小さな一戸建て賃貸住宅に住んでいた我が家には、猫の額ほどの家庭菜園がありました。そこにホームセンターから買ってきた野菜の苗5,6本を春に植えたのですが、夏までにはどこに何があるのかさえ見分けがつかないほど草が生い茂り、2,3本のなすときゅうりを収穫しただけでその年は終わってしまった記憶があります。「こんなんで、私って、農業なんて出来るんだろうか?!」漠然とそんなことを思っていました。
1, 広く、豊かで険しすぎない自然の森に隣接した、狩猟採集の暮らしが出来る地理条件の場所で。
2, 農薬、化学肥料を使わない農業をするために、他の農家さんに迷惑がかからない農地を。
3, 安心して食べられるものを出来る限り自給する。
4, 犬ぞりができる広がりのある森と充分な雪があり、尚且つあまり規制の厳しくない場所を見つける。
日本でこの条件の場所がなければ、カナダ、ロシアなども視野に考えようということになり、まずは日本で探そうと、子育て中は上越、東北などを休日のたびにキャンプをしながら下見してまわりましたが、本州は山が険しすぎて条件に合うところはありそうもないと感じ、北海道の下見キャンプを決行しました。地図上で候補地を挙げたのは3箇所。赤井川村、阿寒湖畔、朱鞠内。
阿寒湖畔に最初に入りました。豊かな森は感動的でしたが、農地がない、国立公園なので規制が厳しすぎるということで断念。赤井川村は山や植林が多く、一目で却下。そして朱鞠内。地形、森の広がりと豊かさ、農地の条件、一目でここなら、と2人共に思いました。アラスカを思わせる地形と人造湖とはいえ魚種も豊富な湖、朱鞠内湖。突起が比較的緩やかで奥深い高大で豊かな森。お隣と1キロ以上も離れて点在する農家と、広くしかも森に囲まれた農地。おそらく私たちが住みたいと思う日本で唯一の場所、と直感しました。
ちなみに、夫は九州出身とはいえ学生時代から冬山登山で北海道には何度も来ており、ある程度北海道は知っていましたし、私は道東の標茶町の出身で、写真撮影のため道内はかなりまわっていました。私にとっては、行ったことのなかった数少ない場所の一つ、朱鞠内。
一目でここだ!と思った私たちは、その足で幌加内町役場に出向き、「朱鞠内に住んで農家をやりたいのですが、どんな農業ができますか?」などと聞きに行きました。すぐに担当課長さんとお話が出来ました。様々な朱鞠内という場所のことをお聞きし、大きなハードルがあることがわかりました。出来るだけ自給したいと思っていた私たちは、肝心のお米のできない場所、と聞かされたからです。

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