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日本のコメの不思議 Ⅱ

日本のコメの不思議 Ⅱ

■不思議その4:農協関係者は成人人口の1割でGDP1%■ 2回目

こうしてブラック・ホールのように税金を吸い込んでいく日本の農業は、日本経済にどれほどの貢献をしているのか。「日本における06年の農業生産出額は8.5兆円である。これはパナソニック1社の売上額約9.1兆円にも及ばない」とは、元農林官僚・山下一仁氏の近著『農協の大罪』の一説である。

パナソニックの従業員は30万人弱なのに、農業では、農家戸数は285万戸、農協職員だけで31万人、農協の組合員は約500万人、准組合員は約440万人もいる。
GDPに占める農業の割合は1%にすぎないのに、日本の成人人口の1割が農協の職員、組合員、准組合員ということになる。[1,P25]
さらにOECD(経済協力開発機構)が計測した日本の農業保護額は、農業の総生産出額とほぼ同じだという。農業保護額とは、前述した減反補助金などの財政支援額、および高い米価の維持による消費者負担など、国家全体としての負担をさす。すなわち農業で8.5兆円の産出額を生み出すために、同程度の負担を政府や消費者がしているわけで、差し引きの国民経済への貢献額はゼロとなってしまう。パナソニックなどの輸出企業がいくら稼いでも、稼ぎがほとんどなく、税金や高い米価で国家のすねをかじっている人口が数多くいるのでは、国民の生活が豊かになれるはずもない。

■不思議その5:農家の9割は「週末農業」■

次に農協の組合員約500万人の実態を見てみよう。平成17年(2005)年の農家の構成は、専業農家23%、第一種兼業農家(農業所得のほうが多い)16%、第二種兼業農家(農業以外の所得が多い)62%となっている。専業農家と言っても、高齢化で農業外の収入がなくなったため第二種兼業農家を卒業したケースが半分以上あり、65歳未満の男子生産年齢人口のいる専業農家は9.5%に過ぎない。
何のことはない。農家といっても、平日は会社勤めや商店経営をしながら、週末だけ農業を営んだり、あるいは定年後に農業を続けている農家がほとんどなのだ。
こうした兼業農家は、当然、限られた面積の耕作しかできない。また、コスト削減や品質向上に工夫する時間も限られる。
現在、日本のコメの単収(単位面積当たりの収穫高)は、粗放的な農業を行っているカリフォルニアより3割も低い。耕作規模が小さく、人件費も高く、その上単収も低いと三拍子そろっては、日本のコメが高いのも当たり前である。
米作の規模が大きくなれば、コストは大きく下がる。現在の米価60キロ1万4千円のうち、人件費を除いた物質費(肥料代や農機具代)は9千円を占める。しかし、5~10ヘクタールと規模の大きい農家の物材費は6千円程度である。
この3千円のコスト差を米価から差し引けば、1万1千円となる。一方、近年の食糧不足による価格高騰で、わが国が輸入している中国産米の価格は1万円である。
安全で美味しい国産米が1万1千円で買えるなら、1万円の中国産米など買う消費者はいないだろう。こうなれば、無理な高関税は不要であり、ムダなミニマム・アクセス米を輸入する必要もない。

■不思議その6:なぜ高コストの兼業農家が大半なのか■

規模の小さな兼業農家の物材費がなぜ高いのか。まず、兼業農家は週末しか耕作をしないので、雑草が生えると農薬を撒いて手早く片付けてしまう。兼業農家の方が、肥料や農薬を多用するのである。
また、週末だけの農作業では、田植機などの農耕機を農繁期の週末しか使わないので、各戸毎に機械が必要となる。大規模専業農家なら平日も機械を使える上に、一台で多くの面積を耕せるので、機械化投資もはるかに少なくて済む。
しかし、それならなぜコストの高い兼業農家が農家全体の9割も占めているのか。他の産業なら、コストの安い供給者がより大きなシェアを占めるはずだ。
理由の一つは、兼業農家の方が専業農家よりも所得が多いためだ。米作主業農家の年間所得は664万円だが、兼業農家の所得は792万円。一般の勤労者所得646万円も大きく超えている。通常の勤労者としての収入に加えて週末のアルバイトとしての農業収入が入るからである。しれも、高コストに見合った高米価が保証されている。その上減反に協力すれば、補助金も貰えるのである。

以下、3回に続く。

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