ホーム > 研究・論文 > 生物多様性を守るためには(COP10を終えて) 当協会 名誉会長・比嘉照夫名桜大学教授

生物多様性を守るためには(COP10を終えて) 当協会 名誉会長・比嘉照夫名桜大学教授

生物多様性を守るためには(COP10を終えて) 当協会 名誉会長・比嘉照夫名桜大学教授

当協会 名誉会長・比嘉照夫名桜大学教授

 10月の中旬から約2週間にわたって名古屋で
行なわれたCOP10(生物多様性条約第10回締約国際会議)は30日の未明、「遺伝資源の利益配分ルール」を定めた新たな国際協定「名古屋議定書」の合意が成立した。同時に「2020年までに、少なくとも陸域の17%、海域の10%を保全する」とする「愛知ターゲット」の内容でも合意した。

 1992年のリオサミット以来、地球環境保全に関する様々な議定書が合意され、世界がゆるやかな連邦に進化していることは、喜ばしい限りであるが、今回のCOP10の生物多様性の保全と活用について、別の視点が必要であることを痛感した。すなわち、人口の増加と日常的に使われている化学合成物質による環境汚染や、その結果において、引き起こされる生態系の破壊や、他の生物種に依存しない問題の解決法について全く論議されていないことである。

 COP10は、ラムサール条約やワシントン条約などのように、特定の地域や種の保存の取り組みだけでは、生物多様性の保全を図ることができないとの認識から、新たな、包括的な枠組みとして、1992年にスタートしたものである。今回の議定書は、これまでの論議の集大成的な意味を持つものであるが、広く保護区を設定したり、遺伝資源の利用のルールだけでは十分でなく、酸性雨を含め、環境や生態系へ影響を及ぼす諸要因も検討すべきである。

 私は、COP10に先だって様々なイベントで「生物多様性を守るためには」等々の講演やCOP10パートナーシップで認定事業となった海の日の「全国一斉EMダンゴ・EM活性液投入」を指導したり、生物多様性交流フェアに出展したり、愛知県の三河湾や伊勢湾における生態系の復活と漁業の振興の成果を中心とするフォーラム等々でコメンテーターとして参加し、EMによる環境浄化と生物多様性の復活について、細々ながらアピールする機会を得た。
 EMのPRはNPO法人・地球環境・共生ネットワーク(略称u-ネット 1200余の団体で会員数25万余)のブースで行なった。ブースは平均の1,5倍の広さを取り、1週間で2000余人の来訪者があり、海外のマスコミ取材もあり盛況であった。特に、「EMで生態系がよみがえるReborn生態系 by EM」と題して出されたEM実践・事例集2010は、和・英併記のため、極めて好評であった。

 名古屋市は、今回のCOP10を記念し、市内の9ヶ所の河川の浄化を、EMボランティアで行なっているが、COP10会場の横を流れる堀川の浄化には、河村市長も参加した。そのためCOP10の開催時には、堀川の悪臭は消え、魚が群れる姿も見え、かなりきれいになったという関係者の評も聞くことができた。
 この名古屋市のEMによる河川浄化のボランティアは、今後も継続されるため、近い将来市内の河川に、三河湾同様にアユが遡上し、伊勢湾がきれいで豊かになるのも、時間の問題といえる体勢になってきた。

 また、プレCOP10として「生物多様性を守る」講演会が三河安城市のロータリークラブによるCOP10開催企画記念行事として行なわれたが、この講演会は同クラブのEMによる環境浄化活動の一環である「油ヶ淵」の浄化に対する総括的な側面もあり、7年ぶりに現地を見る機会を得た。「油ヶ淵」は全面積が0,64k㎡、平均水深は3M、海水と淡水の混ざり合った汽水湖で愛知県では、唯一の天然湖沼である。汚染がひどく、長年にわたって、全国湖沼水質ワースト3にランクされ続ける不名誉をかこっていた。

 2004年から、EMによる水質浄化活動が始まり、2008年には水質ワースト16位になるまでに大幅に改善が進み、この勢いで行けば、中~上位に仲間入りするのも時間の問題となりつつある。かつて悪臭を放っていた「油ヶ淵」は、大小様々な魚が群れ、すがすがしい状態になり、多数の人々が釣りを楽しんでおり、地域によっては釣り大会が行なわれるようになったとのことである。当然のことながら、水鳥の種類や数は、かつてない程に増え、生態系も復活し、三河湾の浄化にも役立っている。

 講演の中で私は「生物多様性を守る」ためにはCOP10で討議される内容はもとより、更に進んで「油ヶ淵」や「三河湾」は今後のあり方に対する答をすでに出しており、本会場で、その事を広くアピールすべきであることを強調した。すなわち、生物の多様性を破壊しているのは農薬や化学肥料、合成洗剤や塩素消毒や家庭での消毒剤の他に、工業を含めた多量の化学物質である。

 同時に、医療や畜産や水産の分野で使われる各種の薬品や抗生物質も無視できないレベルに達していることを説明した。その上でEM技術で代替を行い、EMをあらゆる場面で空気や水の如く使い、環境を汚染する生産や生活様式から、環境を積極的に浄化し、生態系を豊にし、生物の多様性を守るライフスタイルに変えるべきである。愛知県には、多数の実例があり、COP10が開催されるのにふさわしい実績であり、日本が世界に示せる最も望ましい解決策でもあると総括した。

 また「遺伝資源の活用」について考えると、その大半は医療の分野で治療に使われる薬としての効果が中心となっているが、その大部分は、EM技術で代替が可能であり、予防医学を徹底すれば、殆んどのものが不要となる。このように考えると他の生物種を犠牲にしない方法は、いくらでも見つかるものである。問題となっているレアアースやレアメタルも本気で研究すれば、安価な代替策は出てくるものであり、すでに、それを必要としない技術も出来上がっている。要は、これまでの延長線上で考えるか、根本的に考え方を変え、蘇生的な技術革新を実行するか否かである。
 三河安城市の後に、沖縄でのEMフォーラム2010、四国EMフェスタ2010でも「生物多様性を守るために」COP10がらみで同様なコメントを行なったが、特に四国EMフェスタでは海の生態系が豊かになった愛媛県の弓削島にある上島町での成果が発表された。

 事の発端は、大阪で働いていた村瀬さんが定年後は島に戻り、島のために余生を尽くしたいと考えたのが7年前のことである。島に戻ると、区長に選ばれてしまい、あまりにも汚くなった海を見て、何とかせねばと思ったとの事である。EMの情報は、うすうす知っていたとの事であるが、具体的な手がかりがないまま、ある時に、広島EM普及協会の活動を知り、弓削島の海をきれいにする活動に取り組んだとの事である。その結果、数年後には弓削島の海が甦り始め、協力者も次第に増えてきたとの事である。

ページの先頭へ