「EMとはシリーズ」―(3) 理事 萩原 俊昭
「EM-1(原液)」
昭和57年頃、EMの原型は出来上がった。しかし、その頃は名称も決まっておらず、当時、「威力」1・2・3・4号と呼ばれていた。
威力-1号は現在、生ごみの消滅に使われている高温分解菌を使用して難分解の有機物(例、砂糖キビの絞り粕)も分解して堆肥化する能力をもつ顆粒状のもの。
威力-2号は現在、EM-2号として使われている、酵母菌や放線菌主体の液体。
威力-3号は現在、EM-3号として使われている、光合成細菌主体の赤い液体。
威力-4号は乳酸菌主体の液体であったが、EM-1号の出現で役目を終えた。
EM-1号が出現するまで「威力」2~4号を組み合わせて使用していた。分解力が強い威力-1は発酵・合成へ向かうべきEMと方向性が違うことから農業で使用されなくなった。
威力2・3・4号を原液で混ぜることはできず、それぞれ倍率を変えて水に希釈して使用していた。効果は認めるとしても難しい希釈倍率計算に手間がかかり、いつも3液中のどれかが残るという不便な代物であった。
当時の技術で「威力」1~4号に含まれる微生物の性質上、一つにすることは困難であった。例えば、PHが2.5前後の乳酸菌とPHが6前後の光合成細菌は原液で混ぜることができないのは当然であった。
平成4年頃、複数の種類の微生物を生きていながら活動を抑えるという技術が開発(EM最大のノウハウ)された。当時、琉球大学教授 比嘉照夫先生はそれを「失活」と名付けられ、全く新しい技術の開発によって生まれたのがEM-1であった。
EMとは英語、Effective(有用)Microorganisms(微生物群)の頭文字です。
EM-1の特徴は性質の異なる複数の微生物が一液の中に「失活」状態で生存している。例えば、酸素を好む好気性と酸素を嫌う嫌気性、光を好むものと暗い環境を好むもの、温度の高い環境を好むものと低温を好むもの、炭素(C)をエサにする微生物と窒素(N)をエサにする微生物というように、全く相反する性質の微生物が一液の中に仲良く暮らすというのだから驚きである。
残念ながら、今でも微生物学の世界では好気性の菌と嫌気性菌は同居できないと教えられているので、微生物を学んだ人はEMの考え方を信じ難いのである。
EM1は微生物土壌改良資材で(株)EM研究所が製造・販売しているEMのこと。この液は、5科10属80種、主なもの、乳酸菌群、酵母群、光合成細菌群、発酵系の糸状菌群、グラム陽性の放線菌群を複合培養したもの。これらの種々の微生物の働きが土壌中で連動し合い相乗効果を発揮する特性がある